清涼院流水著『カーニバル・イヴ 人類最大の事件』講談社ノベルス、1997.12
『コズミック』(1996.9)、『ジョーカー』(1997.1)に続くJDC(日本探偵倶楽部)シリーズ第3弾である。ややもするとマニア受けを狙った作品群ととられがちだけれど、この人(なのかな?)の言葉遊びの才能はとんでもないもので、存分に楽しませてもらっている。特に、4大ミステリと呼ばれる夢野久作の『ドグラマグラ』、小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』、中井英夫の『虚無への供物』、竹本健治の『匣の中の失楽』(以上発行年、発行元は面倒なので書かない。あちこちから出ているもので。)をサンプリングした『ジョーカー』は「作者」と「読者」の関係性や、「執筆」あるいは「読書」という行為について色々と考えさせてくれるメタ・小説になっており、興味深く読ませてもらった。作品の構造としては竹本の『匣』(京極夏彦ではない。)に一番近いように思うのだけれど、実は両者が私が敬愛するイタリアのメタ・小説家Italo Calvinoの『冬の夜ひとりの旅人が』(ちくま文庫、1995(1990))の持つ構造と極めて近いものであることを指摘しておきたいと思う。忘れるところだったが『カーニバル・イヴ』はこれに続く作品『カーニバル 人類最大の事件』への序奏となっていて、そこから来る中途半端さは否めないのだが、さりとてなかなか笑わせてもらえる作品である。ちなみに巻末のJDC入試問題「つくもっち」をやったところ結果は239点で、作者の評価は「探偵として完成された能力を持っています。」ということだった。まあ、こういうものばかり読んでいるわけだし、人類学のフィールドワークなんて犯罪捜査でないところを除けば(「国家」などによる犯罪については別だけれど。)探偵業と余り変わるところがないわけだから、当然なのかも知れない。(1998/03/28)