岩井俊二監督作品 『花とアリス』
ご存じ岩井俊二監督の最新長編劇場公開映画である。期待に違わず実に良くできた映画で、<思わずうなる>ほどの作品。稀有なる才能の発露をしかと観ておいていただきたい。
このところ岩井監督の作品も含めて何やら殺伐とした内容の映画が多い中で、本作品は基本的にそういったものとは一線を画すかのような何ともほのぼのとした学園恋愛コメディとなっている。まあ、奇才と言っても過言ではない岩井監督の作品なので、そうそう一筋縄ではいかないのも事実。私見するところでは、要するに敢えて時代に逆行するかのような途轍もなくピュアな恋愛コメディを目指しているかのようにも思われた次第。この辺に、<現時点で他の誰もやっていないことをやってやろう>という気概を感じるのだ。
岩井監督自身の書いた脚本による波瀾万丈な展開、主演3名(鈴木杏、蒼井優、郭智博)による見事な「掛け合い漫才」を愉しむのが基本的鑑賞法なのだろうけれど、バレー・落語・トランプ(正しくはカードなのだが…。)・PC等々という素材の活かし方の素晴らしさに眼を見張りつつ、豪華な脇役陣(平泉成、相田翔子をはじめとして、更には広末涼子だの大沢たかおだの…。)が一見無駄な友情出演なようでそれなりに話を膨らましているあたりにも注意を払うべきだろう。他にも仕掛け満載なのだが、まあこの位にしておきましょう。
名作『LOVE LETTER』に引き続き、またもや韓国で大ヒットするのではないか、と勝手な予想を立てつつこの辺で極めて手短に紹介を終える。(2004/04/03)