竹本健治著『闇に用いる力学・赤気篇』光文社、1997.6
本作品は、雑誌『EQ』1995年5月号から1997年3月号までに連載されたものである。「あとがき」にもある通り、1995年初頭にピークを迎えたオウム真理教による一連の事件が本作品に深い影を落としている。バイオテクノロジー、定方向進化、超心理学、超能力、フリーメーソン、薔薇十字団、『シオンの議定書』、A.ヒトラー、カバラー、錬金術、グノーシス主義、聖書外典、日ユ同祖論、竹内文書、『東日流外三郡誌』、神代文字、戸来村、ナニャドヤラ、インターネット、UFO、新々宗教、右翼政治結社、連続爆弾魔、連続放火魔、新種のウィルスによるらしい連続突然死、毒物の貯水槽投下事件等々、ありとあらゆるネタをブチ込んだ、著者曰く「全体小説」なのだけれど、いやはや、この人の博識ぶりは誠に恐るべしである。とりあえず、本書は「序章」みたいなものらしく、今のところ事件が続発して一向に収束しておらず、むしろ拡大傾向にあり、この後どういう展開をしていくのかが楽しみなのだけれど、またまたおなじみのメタ・フィクショナルな方向に行ったりするのはなるべく避けて欲しいなどと勝手な注文をさせて頂く。京極夏彦のような徹底的にフィクショナルな在り方だって可能なのだから。ということで、続編の一日も早い刊行を待ち望む。(1998/07/12。07/16に少々加筆。)