Lasse Hallström監督作品 Salmon Fishing in the Yemen 2013.06(2011)
スウェーデン出身のラッセ・ハルストレム(Lasse Hallström)が手掛けた英国製の恋愛コメディである。原作はポール・トーディ(Paul Torday)による『イエメンで鮭釣りを』(白水社)という小説。主演にユアン・マクレガー(Ewan McGregor)とエミリー・ブラント(Emily Blunt)を据え、モロッコ・ロケまで敢行したかなり大がかりな映画でもある。
エミリー・ブラント演じるハリエットは投資会社のコンサルタント担当。ある日、イエメンの富豪シャイフから、砂漠国であるイエメンで鮭釣りを、というプロジェクトへの投資を持ちかけられる。このプロジェクト、魚類学者であるフレッド(マクレガー)に相談するも一笑に付されるが、アラブ諸国との外交面で明るい話題を作りたい首相広報官の目にとまり、実現へと一歩を踏み出す。様々な妨害や困難を乗り越えて、鮭釣りプロジェクトは果たして成功するのか、そしてまたフレッドとハリエットの恋の行方は、というお話。
さすがに上手い、というか、一分の隙もなく作られた見事な恋愛コメディなのだけれど、その見事なコメディに、中東情勢や民族差別、あるいは環境問題等々といったテーマも決して浅くない形で盛り込んでいるところが何とも素晴らしいと思う。そういった、一見して話が重くなりそうなテーマ群を、良く出来た恋愛コメディの中に、決して軽く扱うわけでもなく、非常に適当なバランスで配合している辺りの手腕がやはり尋常ではない。久々にこの監督の真骨頂を見た気がする。以上。(2013/08/29)